またあの、不思議な現象です。
突然誰かの頭の中に放り込まれるような。
干渉はできず、だけども鮮明に、今起きていることのようにリアルな映像が流れます。
これは過去の記憶なのだと、確信に近い気持ちでそれを見ていました。
今見えているのは、カヌ・エ様の記憶なのでしょう。
場面は何か戦いの最中であり、他の国の指導者らしき人達と指揮を執っているようです。
三国で手を組んで戦ったという、五年前のカルテノーの戦いでしょうか?
戦っている相手は見えませんが、カルテノーならガレマール軍・・・。
しかし、もっと大きなものと戦っているように見えます。
上空から降り注ぐ攻撃の中、カヌ・エ様は『ダラガブからいでし黒き蛮神による虐殺』と言っていました。
戦況は逼迫していて、とにかく冒険者たちを優先的に逃がすようにと指示を出す各国の指導者たち。
そんな中、カヌ・エ様は遠くの高台に、不穏な気配を感じ取っていたのです。
高台を気にするカヌ・エ様の意識に押し出されるように、私の意識はその気配へと飛び、その姿がはっきりと見えました。
その者たちのいでたちは、長老の木に現れた魔術士と同じでした。
魔術士を倒したとき、「”我ら”天使いの秘術が打ち破られるとは・・・」と言っていました。
パパリモによれば、伝承では『アシエン』と呼ばれる存在だそう。
5年前の第七霊災の折に、その場所に居たのです。
彼らの目的は一体・・・。
考えを巡らせながら、私の意識は遠のいていくのでした。