深い森の中で静かに佇むグリダニア。
エオルゼア三大都市国家と呼ばれるものの一つであることは知っていましたが、実際に来てみると、近代的とは真逆の印象を受けました。
緑と水車と木造建築の町。
食べるものや服装を見ても、人々の暮らしは質素なものに思える。
キョロキョロしている私に気付いて、一人の兵士さんが話しかけてくれました。
都市で働く冒険者はまず、『冒険者ギルド』で登録するそうです。
ふむ。
右も左もわからない土地ゆえ、冒険者をまとめている組織があるのはありがたいですね。
カーラインカフェと呼ばれるその場所は、町に入ったすぐ目の前にあり、さっそく挨拶に行ってみることにしました。
カーラインカフェを取り仕切るのは、エレゼン族のミューヌさん。
一人称は『僕』ですが、きれいな女の方です。
冒険者のサポートや仕事の斡旋、食事やお酒の提供も行っているらしく、簡易な宿もあり、冒険者の憩いの場ともなっているようです。なんとありがたい。
ミューヌさんは、駆け出し冒険者である私に、まずはエーテライトを登録することと、挨拶しておいた方がいい場所や人物を教えてくれました。
そして道中困ってる人を見かけたら、率先して助けてあげること。
確かに、まずは場所を知り、人を知らねば。
町をぐるっと回りながら、グリダニアの人々を観察してこよう。
そんなことを考えている中、ミューヌさんが『第七霊災の後遺症』についての話をしてくれました。
私たちが住む惑星、ハイデリンは、過去に七度の天変地異に見舞われています。
その、人類滅亡も危ぶまれるほどの大災害のことを、霊災(れいさい)と呼びます。
一番新しい第七霊災が起こったのが5年前。
それにより、エオルゼア地方は甚大な被害を出しましたが、実は何が起こったのか、はっきりとは知りません。被害の大きかった地域の人たちの証言が、曖昧で。
ミューヌさんもまた、その頃の記憶が曖昧なのだそうです。
人々はその現象を、第七霊災の後遺症と呼んでいるのだとか。
ただ一つだけ、皆が確かに覚えていることがあるそうです。
それは、その時エオルゼアの危機を救おうと奮闘してくれた英雄たちが居たこと。
しかし彼らのことを思い出そうとしても、強烈な光に阻まれるかのように顔も名前もかき消されてしまう。
なので人々は彼らのことを、敬意をもって『光の戦士たち』と呼んでいるのだと。
・・・なんとも不思議な話ですね。
5年前何が起こったのか、なぜ人々は覚えていないのか、光の戦士たちはどこへ行ってしまったのか・・・。
世界をめぐる旅をしていたら、いつか私も知る機会があるのでしょうか。
何はともあれ、ミューヌさんのアドバイスに沿って、まずはエーテライトに向かいましょう。
各地にあるこのひときわ大きなエーテライトに触れて交感しておけば、転送魔法の移動先として使えるようになります。
遠く離れた地にいても、転送魔法を使うことで一瞬で飛んでこれるのです。
また、大きな都市では、町の中専用の小さなエーテライトが置いてあり、町の中での移動が楽になります。
一通り触って交感してくるのがいいですね。
小さなエーテライトを探しつつ、町を見て回ったのですが、町の人たちは私が冒険者と知るや気軽に頼みごとをしてきます。
届け物をしたり、散らばった荷物を拾ったり・・・。
冒険者ってハンター的なイメージでしたが、便利屋だったのですね・・・。
ですが少額ながらお礼も頂けるし、どうにか食べていくことはできそうです。
そんな小さい依頼の積み重ねでも、少しずつ冒険者としての経験値は上がっていき、人々の信頼を得ていくことができるのでしょう。
やれることは、何でもやってみよう。
そうやってグリダニア中を駆け巡っていたら、すっかり日も暮れてしまいました。
雨も降ってきて、今夜は星も見えない。
ですが駆け回った疲労感の中、しとしとと落ちる雨音だけが聞こえるグリダニアの静かな夜は、悪くないなと思えるのでした。